抄録
【緒言】LTB4は、生体防除に重要な役割を果たす一方で、種々の炎症性疾患の発症、増悪の原因になると考えられている。また、近年新しくBLT2 receptorが発見、クローニングされた。これらのことからLTB4 receptor antagonistの創製は新しい局面を迎えていると考えられる。我々は、新規な構造を有するLTB4 receptor antagonist創製を目的として、LTB4 conformationに基づきbenzo[b]furan骨格を母核に持つdrug designを考案した。それらの合成、反応、生成物の構造などの検討し、また併せて生理活性について検討した。【デザイン】LTB4 conformation (Fig. 1)に基づき、脂溶性部分をbenzo[b]furan骨格に置き換えたデザインを考案した。さらに2-Alkylcarbamoyl-1-methylvinyl基に着目し、芳香環との共役を考慮してbenzo[b]furan環の4位、5位、2位に導入した化合物A, B, Cをデザインし、これらを合成した(Fig. 2)。【合成】1. Aの合成2-Acetyl-7-hydroxybenzo[b]furan (1)にNBSを用いて選択的に目的とする4-Br体 (2)を得た。2のOH基をalkyl化して得た7-alkyloxy体 (3)に、N-alkylcrotonamidesを用いてHeck反応条件下、目的とする4を得た。さらに4は、ethyl diethylphosphonoacetate を用いてHorner–Wadsworth–Emmons (HWE)反応をおこないα,β-不飽和エステル (5)、よびそのカルボン酸体 (6)を合成した (Scheme 1)。 2. Bの合成5-Bromosalicylaldehyde (7)を原料として閉環合成により5-bromobenzo[b]furan体 (8)を合成した。N-Alkylcrotonamidesを用いて上述と同様の条件下、8の5-Brに対してHeck反応をおこない目的とする9を得た (Scheme 2)。3. Cの合成1の7-OH基をalkyl化して得たalkyloxy体 (10)の2-acetyl基に対してNaH / THF条件下、N-alkyl diethylphosphonoacetamidesを用いるHWE反応をおこない、目的とする11を得た。また、HWE反応におけるE体, Z体の生成比について検討を加えた (Scheme 3)。これらの合成化合物において、2-Alkylcarbamoyl-1-methylvinyl基をbenzo[b]furan環の異なった置換位置に導入することによる構造上の違いについて検討した。【生理活性の検討】合成したbenzo[b]furan誘導体のLTB4 receptor antagonist活性の検討をおこなった。化合物A, Bは用量依存的なantagonist活性を示し、興味深い知見を得た。
