日本らい学会雑誌
Online ISSN : 2185-1360
Print ISSN : 0386-3980
ISSN-L : 0386-3980
雑種ヌードマウスへのらい菌接種(続報)CD-1(ICR)雑種ヌードマウスの成績
中村 一成與儀 ヤス子
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 57 巻 4 号 p. 186-190

詳細
抄録

ヌードマウスの遺伝的背景の遺伝子が異なるとらい腫らい病巣の形成能も異なることを始めて明らかにし得た。すなわち,スイス系で純系であるNFS/NヌードマウスはoutbredのN: NIH(s)ヌードマウスと同様,らい腫らい病巣の形成が高く,感受性能が良好であったのに対し,同様にスイス系であるoutbredのJcl:1CRヌードマウスおよびCrj: CD-1ヌードマウスはいずれもらい腫らいの形成能は軽度でらい菌に対し"抵抗性"であった。しかしながら,Jcl: ICRより分離・系統化されたNODマウスにCrj: CD-1(1CR)のヌード遺伝子を導入した雑種ヌードマウスはらい菌に高い感受性能を有することを明らかにし得た。
そこで本報では,NFS/NおよびN: NIH(s)ヌードマウスの雄を用いてのクロスインタークロス方式により雑種ヌードマウス(M1)を作出した。一方,クレアではJcl: ICRマウスより分離・系統化したIAIと雄のNFS/Nヌードマウスとの雑種ヌードマウスJcl:AF-nuを開発市販しているので購入し,らい菌に対する感受性能をそれぞれ検討したところ,らい腫らい病巣の形成能が高いことが判明した。この知見は,既報のICRラザットマウスを作出する過程で得られた同胞ヌードマウスが,らい菌感受性能がよいこと,さらにヌードラットでも遺伝的背景が同じウイスター系であるのにSHR雑種ヌードラットはらい菌感受性能が高いのに対し,WKY, WM,あるいはLOU/N雑種ヌードラットでは感受性能が低いことを解明し得たことを考え合せると興味ある免疫遺伝学的知見と考えられる。従って,今後さらにらい菌感受性能あるいは"抵抗性"の遺伝的解析を続行し,その生体防御の機能を究明してみたい。

著者関連情報
© 日本らい学会
前の記事 次の記事
feedback
Top