日本らい学会雑誌
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実験的らい腫らいモデルとしての先天性無脾無胸腺(Lasat)マウス(続報):類らい腫病巣形成能における脾臓の役割
與儀 ヤス子中村 一成
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1988 年 57 巻 4 号 p. 191-198

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抄録

先天性無脾無胸腺(Lasat)マウスおよび生後4週齢で脾臓摘出を実施した数系統の先天性無胸腺(ヌード)マウスの右後肢足内と右上唇内のそれぞれにらい菌を接種して,それらのらい菌感受性について検討を行った。先天性無脾無胸腺マウスと脾摘出無胸腺マウスのいずれにおいても,それらの対照に比較して良好な感受性が認められた。加えて,脾摘出無胸腺マウス間では系統差がみられ,別報(4)で高感受性であったNFS/N, C3H/HeN+MTVとCBA/N無胸腺マウスでは,脾摘出によってさらに感受性が増強された。組織の萎縮を伴う高度に異常な奇形肢,足,趾を呈する先天性無脾臓マウスの後肢奇形足内でのらい菌の増殖は困難であったのに対して,先天性無脾無胸腺マウスの場合は,重篤な奇形肢,足,趾内でもらい菌の増殖は可能で,骨髄に及ぶらい菌増殖像が観察された。さらに先天性無脾無胸腺マウスには,後肢,足,趾奇形度に伴う接種足腫脹の個体差に加えて,らい菌接種後後期に腫瘍の発生が出現する個体がみられ,それらの個体ではらい病巣が抑制された。得られた所見から,らい菌に高感受性の遺伝的背景をもつ先天性無胸腺マウスにDh/+遺伝子を導入して新たな先天性無脾無胸腺マウスを作出すれば,さらにらい菌に対して高感受性の実験モデルマウスが作出できるものと思われる。

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