抄録
たまたま保存されていた1910年より1951年にいたる医学的研究の資料の中から,特に足部を撮影した写真乾板38枚(54例96足)を選び出し,外反母趾の合併の有無を調べてみた。その結果,一応外反母趾と指摘できたのはわずかに6例7足であり,これらから足穿孔症などに続発した第1中足骨骨頭の破壊によるらしいものを除くと2例3足に過ぎず,それも軽度かやや中等度に近い状態であるから,治療の対象にはまずならないにちがいない。
このように過去においては,現在よりも,外反母趾の発症がはるかに少なかったらしく,その理由は下駄や草履を主に履いていたためであろうが,包帯の巻き方もこれらを履きやすいように工夫されていた。
故に外反母趾の発生には,少なくともらい患者に限っては履物などによる外因性要素を第一義的に考えたい。