高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム : 臨床の技 (スキル)
失行症
─「みること」「さわること」とのかかわりへ─
中川 賀嗣
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2009 年 29 巻 2 号 p. 206-215

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抄録

入力刺激条件と出力対象条件が,行為・動作処理を決定するという観点から,行為・動作の3 つの側面を指摘した。「何を行うか」の側面 (動作内容の選択),「どのように行うか」の側面 (動作駆動・抑制と身体間の調和),動作の「正確さ」の側面 (補正) の3 つである。この各側面ごとに,それぞれ関連する障害を分類した。この分類は,「ある区画 (側面) に分類された障害は,他の区画の動作に影響しない」ことを意図して作成したもので,これは今後この作業を進めることで独立した機能区分が明らかになると考えたためであった。これら3 つの側面は視覚や体性感覚と密接な関係を有する。とくに体性感覚に関して,体性感覚が障害されると,補正の障害が生じる。一方動作内容の選択障害は生じないが,体性感覚は,動作 (内容) の学習と再現に関与している可能性が考えられた。また「動作駆動・抑制と身体間の調和」の一症候である運動無視は,左右四肢の動作役割分担決定に,身体状況に関する体性感覚情報が用いられていて,その感覚情報の離断によって生じている可能性があると考えられた。

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© 2009 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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