高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
認知症者に対する集団での包括的認知訓練の効果
─MMSE (Mini Mental State Examination) の下位項目による分析─
飯干 紀代子稲益 由紀子尾堂 友予笠井 新一郎新牧 一良猪鹿倉 忠彦
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2009 年 29 巻 4 号 p. 426-433

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抄録

療養型医療施設入所中の認知症者 63 例 (男性 22 例,女性41 例,平均年齢75.8±7.1 歳,MMSE 平均22.7±4.0 点) に集団での包括的認知訓練を 4ヵ月実施し,MMSE 得点および MMSE下位項目得点の変化を分析した。訓練内容は言語・空間・構成・計算・注意・記憶・遂行で構成され,1 セッションは約 60 分であった。1 グループの患者数は約 15 例で,スタッフは言語聴覚士など約5 名であった。訓練前と終了後の MMSE 得点を比較すると,全対象では0.7 点上昇したが有意差はなかった。認知症の原因別では Alzheimer 型と Lewy 小体型が 1.4 点,認知症の重症度別では MMSE 21~23 点の群が 1.6 点の有意な上昇を示した (p < 0.05)。また,MMSE の下位項目得点では見当識と言語の項目に有意な上昇を認めた (p < 0.05)。本対象と MMSE 得点が同程度の Alzheimer 型認知症に対する塩酸ドネペジルの薬効は 0.3~1.3 点とされることから,服薬と包括的認知訓練を併用することの効果が示された。とくに,見当識と言語の項目は改善しやすいことが示唆された。

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© 2009 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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