2011 年 31 巻 3 号 p. 261-268
パーキンソン病 (Parkinson's Disease : PD) は運動症状を主体とする疾患であるが, 近年ではさまざまな非運動症状をきたすことが報告され, 注目を集めている。本稿では, 多岐に渡る PD の非運動症状の中でも認知機能障害に焦点を当て, とくに社会的認知機能について詳しく述べる。社会的認知とは, 他者の情動表出や内的な心理状態などのコミュニケーションに重要な情報処理を担う, よりよい人間関係を築くために必要な機能である。これまでの研究により, PD 患者では他者の表情を見て情動を読み取る表情認知や, 損得の情報を学習し適切な行動を選択する意思決定過程において, 健常者とは異なるパターンが観察されている。また最近では, 社会的認知の重要な基盤のひとつである「心の理論」機能の障害の有無が検討されている。これらの認知機能障害は PD 患者の日常生活や社会活動に影響を及ぼす可能性があり, 慎重に評価する必要があると思われる。