高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
失語症における呼称の障害特性─反応時間と関連要因からの検討─
大森 智裕藤田 郁代
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キーワード: 失語症, 呼称, 反応時間, 錯語
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2024 年 44 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

  本研究の目的は, 失語症における呼称の障害特性を反応時間およびその関連要因から検討し, 失語症者の呼称成績が, 呼称の開始時間を先延ばしすることによって改善するかどうかについて検討することであった。対象は失語症者 19 名であった。方法は, 線画の呼称課題を実施し, 正答・誤答の反応時間を計測した。これを基に, 誤答の反応時間の累積相対度数が 80% となる時間幅を失語症者ごとに抽出し「誤反応時間幅 (error response time : 80% ERT) 」と定義した。続いて, 呼称開始時間の異なる呼称課題 (80% ERT 条件・即時条件) を実施した。80% ERT 条件は, 刺激提示から 80% ERT が経過した時点で呼称を求めた。その結果, 失語症者では, 誤答は正答より反応時間が長く個人差が大きいことが明らかとなった。 また, SLTA 呼称成績が良好な症例ほど呼称の先延ばしによって呼称成績が改善する傾向がみられた。以上から, 失語症者の呼称訓練に際して, 呼称開始時間を考慮することの臨床的意義について考察した。

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© 2024 一般社団法人 日本高次脳機能学会
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