人間生活文化研究
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原著論文
2つのモノクロナール抗体の1回同時注入により惹起させた,特徴的な蛋白尿動態を示す進行性腎病変
藤岡 由美子
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2018 年 2018 巻 28 号 p. 793-800

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抄録

 臨床では一度は治癒したかにみえた腎病変が長い潜伏期間を経た後再発し,腎不全に進展する症例が頻繁に経験される. しかし,その様な病態を再現するモデルはこれまで限られていた. 先行研究において,糸球体上皮細胞傷害が軽症でも後に傷害したメサンギウム細胞病変の増悪により進行性腎炎が惹起されたとの報告を基に,双方の細胞を同時期に傷害した場合どのような病変が起こり得るかを検討した.

 メサンギウム細胞を標的とする抗モノクローナルThy1.1 抗体(1-22-3)と糸球体上皮細胞を標的とする抗nephrin 抗体(5-1-6)を同時に1 回で注入したところ,相乗的な大量の蛋白尿が発現した後,一度は鎮静化したものの,3 ヶ月後に再び出現した後は9 ヶ月まで徐々に増加するという特徴的な蛋白尿の経過を辿る腎病変が惹起された. 9 ヶ月後の光学顕微鏡像では,糸球体硬化,尿細管の萎縮及び細胞浸潤を伴う間質の線維化を確認し,蛍光顕微鏡では糸球体内にI 型collagen の沈着を,電子顕微鏡像では足突起の消失と尿細管間質でのcollagen 線維の沈着を確認した. 蛋白尿が再発する3 ヶ月後では,光学顕微鏡像で、既にメサンギウム細胞の増殖が僅かに観察され,蛍光抗体法では糸球体内I型 collagen が沈着していた. 一方,各々の抗体を単独で投与した群では,何れも一時的な蛋白尿を伴う可逆性の腎病変に過ぎず,光学,蛍光,電子顕微鏡像の何れも特徴的な病変は観察されなかった. これらの結果から,メサンギウム細胞と糸球体上皮細胞には相互的な保護作用がある可能性が示唆された. これまでに抗体を1 回注入しただけで進行性腎病変を惹起させたモデルはなく,今後はこの新規な病態モデルの精度を高め,徐々に進行する腎病変のメカニズムや治療法の解析へ使用されることに期待している.

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© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
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