人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
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原著論文
  • 土肥 麻佐子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 26-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/12
    ジャーナル フリー

    既製服を簡便にカスタマイズするシステムの開発を目指して,人が着装した衣服をモデル化することを目標とする.第一段階として,人が着装した衣服の身頃部分をモデル化するための方法を検討した.20~35歳の成人女性55名の人体3次元形状データの体幹部上半身を切り出し,身頃部分の凸閉包形状を生成した.次いでランドマークに基づいて相同モデルを生成し,左右対称の身頃モデルに変換した.55体の身頃モデルを主成分分析した結果,「肥り-痩せ」,「身体の厚い-薄い」,「いかり肩で反身傾向-なで肩で屈身傾向」,「乳房の大きさとバストラインからウエストラインにかけての身体の傾斜」,「前肩-後肩」の5つの主成分軸で衣服の身頃部分の形態特徴を説明することができた.いずれも衣服パターン補正のポイントとなる要因である.さらに身頃モデルのメッシュを布目にあわせて修正することにより,人が着装した密着型の衣服の身頃部分をモデル化できることがわかった.

  • 早川 洋子, 大熊 慶, 高橋 裕子, 内海 舞香
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 39-46
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,ボクシングエクササイズ(BE)とヨガエクササイズ(YE)の実施が気分(POMS)に対してどのような急性の心理的影響をもたらすかを明らかにすることを目的として実施した.対象者は,T市立体育館のフィットネスプログラムであるBEプログラムもしくはYEを取り入れたプログラムのいずれかの教室に自主的に参加している中年女性40名(各プログラム20名)であった.両教室ともに各運動プログラムを60分間実施した.対象者の気分については,1回の教室の運動実施の前後において,短縮版のProfile of Mood States(POMS)を用いて評価を行った.すなわち,各運動プログラムの気分に対する急性の影響については,POMSの(「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「敵意」「活気」「疲労」「混乱」)6つの各下位尺度の運動前後の値についてWilcoxon検定による群内比較を行った.群間の気分の変化の違いについては,各下位尺度について,運動前から運動後の変化量を目的変数,各運動プログラム群を説明変数,運動前の値,年齢,BMIを共変量とした共分散分析を行った.その結果,BE群の運動前後の気分については,「緊張-不安」,「抑うつ-落ち込み」の下位尺度において有意なポジティブな変化が認められたが,その他の項目には有意差を認めなかった.一方,YE群の運動前後の気分については,「緊張-不安」,「抑うつ-落ち込み」,「怒り-敵意」,「活気」,「混乱」において有意なポジティブな変化が認められた.また,BE群とYE群の気分の変化の違いについて検討した結果,「怒り-敵意」のみに有意な差が認められ,BE群でネガティブな変化であったのに対して,YE群ではポジティブな変化が認められた.以上のことから,運動様式(動的,静的)の異なる2つの運動プログラムは共に中年女性の気分に急性の変化をもたらすが,その変化の内容は運動強度や運動様式により異なることが示唆された.

  • 舘井 菖
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 319-336
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

    近年,聴覚障害者を言語的少数者である「ろう者」と表現し,彼らの文化体系に関する研究が盛んに行われている.しかし,途上国では医療モデルが根強く残り,ろう文化研究がほとんど行われていない.そこで本研究ではインドの学校を対象として,ろう教育が急激な変化を遂げる中,ろう者の間でどのような文化が見いだされるか明らかにすることを目的とする.
    対象地域はデリーとダージリンとし,参与観察法を用いた.学校種は「ろう児が複数人在籍している」という条件に該当する学校を選出した.基本的には生徒と教員のやり取りを観察していたが,必要に応じて聞き取り調査を行った.観察したデータの中で,ろう者と聴者との交流で顕著に見られた特徴や,ろう者同士の特有のやり取りが見られたものを抽出し,それらを「ろう文化」と捉えた.
    フィールド調査の結果,①学校において少数の教員が多数の生徒を支配し,管理する状態,②聴者とろう者の相互作用,③ろう児が築く遊びの世界が見られ,④徹底した口話教育が行われた学校においては,ろう児集団における相互作用が見られないことが分かった.また,口話教育を経験した成人の語りから,彼らの帰属集団の不明確さが明らかになった.
    調査の結果から,多くの学校において口話主義が支配的になっていることが分かった.聴者がろう者に対して,直接的な権力よりも,権力関係を維持するイデオロギーを発展させることによって,支配を広げている点が植民地主義と類似している.また,聴能主義下では,ろう児集団の相互作用が形成されにくく,成人後も帰属集団が曖昧になることが分かった.早期からの帰属集団の確立が必要とされるとともに,従来の「ろう者」の概念には括られない,多様なろう者の存在を認めることによって,ろう文化をまた新たな視点から捉えることができる.
    今回の調査では,調査期間の短さや言語上の障壁から,ろう者へのインタビュー調査が不十分だった点が課題となった.そのため,今後の研究においては,インド手話を習熟した上で,より長期的な期間で,インタビューを中心とした質的な調査をさらに重ねることが求められる.

  • 井上 源喜, 川野 田實夫
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 559-573
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

    大分県日田市地域の筑後川(三隈川)水系における泡状物質の成因を明らかにするために,泡状物質中のバイオマーカーの炭化水素,脂肪酸およびステロールの分析を行った.非環式炭化水素は奇数炭素優位のn-アルカン(C15~C35)および未同定の分岐アルカンが卓越し,少量のイソプレノイドアルカンが存在する.また,熱変性を受けたトリテルパンやステランがUCMH (unresolved complex mixture of hydrocarbons)とともに検出された.脂肪酸は短鎖n-アルカノイック酸(C12~C19)が多く含まれ,少量の長鎖n-アルカノイック酸(C20~C30)と分岐脂肪酸(イソ-,アンチイソ-C13~C17)が存在する.ステロールはコレステロールが主成分である.これらの特徴より,泡状物質中の有機物は珪藻を含むプランクトンなどの藻類起源の寄与が大きく,陸上植物や水生植物等の維管束植物および真正バクテリアの寄与は小さい.昆虫のユスリカChironomidaeなどのサナギが分岐アルカンの起源と考えられる.また,重油,潤滑油やアスファルトなどの石油関連物質やこれらの燃焼生成物が泡状物質の生成や安定性に寄与している可能性がある.

  • 古市 孝義
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 574-591
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,特別養護老人ホームにおいて介護記録の勉強会を行うことで介護福祉士の記録への意識や実践における活用の変化が表れるかを明らかにするために行った.研究者主体で勉強会を行い,勉強会前後には半構造化面接による介護記録の目的に関するヒアリング調査を行った.勉強会前のヒアリング調査から介護記録の目的として考えられていた内容は≪情報共有≫≪介助の向上≫≪リスク管理≫≪家族への責任≫≪申し送り≫≪連携≫≪義務としての記録≫の7つのカテゴリーが抽出された.勉強会前のヒアリング調査をもとに,介護記録の目的,書き方,SOAP記録の意義,書き方に関しての勉強会を行った.勉強会後に行ったヒアリング調査では,≪情報共有≫≪リスク管理≫≪連携≫≪仕事の一環≫≪活用方法の変化≫のカテゴリーが抽出された.≪情報共有≫≪リスク管理≫≪連携≫では,大きな意識の変化は見られなかったが,≪仕事の一環≫≪活用方法の変化≫において,≪義務としての記録≫の意識から≪仕事の一環≫としての意識の変化が見られた.勉強会の実施を通して介護記録,介護に関しての意識が向上したことで介護の質の向上が図られたと考える.

  • 石井 雅幸, 塚本 美紀
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 592-602
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    小学校理科授業においては,問題解決の過程を取り入れた学習を展開している.この学習過程においては,問題に対する結論を導く過程における「考察」という過程を歩む.この「考察」の過程における指導は,曖昧で子どもはもちろん教師ですら明確な指導の理念をもって行われていない現状が明らかになりつつある.そこで,改めて小学校教師は小学校理科の学習における「考察」をどのように捉え指導を行っているのかを明らかにするための教師向けの質問紙を開発し調査を行った.その結果,考察場面における指導のあり方や,考察場面では何を子どもに考えさせようとしているのかが不明確であることが分かった.今後,ここで明らかになった教師の実態を踏まえて,小学校の理科学習における「考察」場面の指導のあり方を検討したい.

  • 松村 茂樹
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 603-609
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    ボストン美術館東洋美術展示場に掛けられている呉昌碩「与古為徒」扁額は,同美術館中国・日本美術部長であった岡倉天心が呉昌碩に依頼したものと考えられて来たが,実は,天心の友人で,当時上海在住の漢学者・長尾雨山が,隣人関係にあった呉昌碩に揮毫を依頼し,黒漆木額に仕立ててボストンの天心宛に送ったものである.この頃,雨山は,天心より,ボストン美術館鑑査委員を委嘱されており,その就任記念に,この扁額を贈ったと筆者は考えている.天心のボストン美術館における活動は高く評価されているが,その背景に呉昌碩と交流した雨山という中国の正統的学問を受け継ぐ学者の協力があったことは,これまでほとんど指摘されていない.本稿は,これを分析し,近代において画期的成果を収めた日・中・米文化交流の意義を明らかにすることを目的とする.

短報
  • 工藤 陽香, 山中 千恵美, 青江 誠一郎
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 140-145
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/10
    ジャーナル フリー

    近年,肥満の増加に伴い,併発する頻度の高い非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が着目されている.日本でのNAFLD有病率は約30%と報告されており,今後さらに増加していくと予測されている.分岐鎖アミノ酸(BCAA)は以前より骨格筋合成促進作用があるとされサプリメント等で使用されてきたが,近年脂肪蓄積抑制作用があると報告されている.そこで,食餌性肥満モデルマウスにおけるBCAAの肝臓脂質蓄積への影響について検討を行った.飼料はAIN-93G組成を基本とし,20%カゼインをコントロール(CO群), BCAA(12%ロイシン,5%バリン)を強化した群(LV群)とした.また,脂肪エネルギー比が50%となるようラードを添加し,5週齢雄のC57BL/6Jマウスに12週間給餌した.その結果,肝臓トリグリセリド蓄積量がコントロールと比較して有意に低下した.肝臓のmRNA発現を測定したところ,脂質合成系の転写調節因子であるステロール調節エレメント結合たんぱく質-1c(SREBP-1c)および脂肪酸合成酵素(FAS),および脂質分解系の転写調節因子であるペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)およびその下流のアシルCoA酸化酵素(ACOX),並びに炎症マーカーの発現に有意な差は見られなかった.しかし,酵素活性を測定した場合,CO群と比べてLV群でFAS活性について有意差は見られなかったが,ACOXではコントロールと比較してBCAA添加で有意に高値を示した.以上の結果より,ロイシンとバリンの添加によりACOXを活性化させβ酸化の活性を高めることで肝臓脂肪蓄積を抑制する可能性が示された.

  • 下田 敦子, 大澤 清二
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 610-620
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

    ミャンマー最深部に居住するカヤン人(カレン族のサブグループ,カヤン語を母語とする)女性は頸部に真鍮製のコイル状の重く長大な首輪を生涯に亘って装着し続けるという伝統を今もなお継承している.カヤン人の多くが暮らすミャンマー東部のカヤー州ディモソー地区(T村,S村,R村,P村)においては,全女性人口の10.6%が首輪を装着している(下田,2015).しかしながら,この奇習の理由ははっきりとせず,定説があるわけでもない.一方で,近代化による急激な生活様式の変化により,この習慣は徐々に消失しつつある.「人は何故,苦痛を伴ってでも身体に装飾を施すのか?」「美を装うために人は身体変工をするのか?」本研究では,この地区において「首輪を装着しているカヤン女性」「首輪を装着していないカヤン女性」「カヤン男性」という3群を設定し,首輪装着についての美醜観について聞き取り調査を行い,主成分分析により探索した.その結果,以下のことが明らかになった.
    1)首輪を装着している女性たちは自分たちの身体変工について非常に肯定的であり,美しいと意識している.
    2)首輪を装着している女性はモノとしての首輪についての負担感を持っている.

  • Atsuko Shimoda, Seiji Ohsawa
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 638-644
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

    ミャンマーの最も奥地であるカヤー州のタイ国境に近い4つの村に,カヤン人がいる.カヤン人の女性には今もなお首輪装着という習慣が残存している.

    3kgにもなる重く,長い首輪をつけて,日常を送り,しかも生涯を通じて行っている.この奇妙な習慣を外部世界の人々は非常に奇異に感じている.では,なぜ彼女たちは首輪をつけるのか?意味するところは何か? この研究ではこの問いに答えるために,30対の対照的な言葉を用いるSD法(semantic differential method)を用いて,その意味を探索した.比較のために,首輪をつけた群,首輪をつけない群の女性群と男性群の3群にインタビューをした.その結果,首輪装着者が首輪を誇らしく,好ましく,そして美しい装飾品として身体の一部のようにイメージしていることが明らかになった.

    文化とは非常に相対的である.カヤン女性の奇習は彼女らにとって奇習ではなく,美しい身体を飾る身体の一部であるという解釈が成り立つ.

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