人間生活文化研究
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The American Frugal Housewifeに於ける家事仕事の意義
西田 梨紗
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2019 年 2019 巻 29 号 p. 799-805

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抄録

 本研究は, リディア・マリア・チャイルドのThe American Frugal Housewife (1829)では女性の家事仕事がどのように意義付けられているかを明らかにすることを目的にしている. この本には, 低価格で作れる料理のレシピや, 不要な物を日用品に再利用する方法などが掲載されているように, 主婦たちの暮らしに役立つ記述があふれている. 加えて, 堅実な暮らしは道徳とも結び付くことが教え説かれており, 女性たちに高い精神性を教え説く記述も含まれている.

 このような特徴をもつThe American Frugal Housewifeであるが, 19世紀半ばのアメリカでは女性のために執筆されたコンダクト・ブックは数多く流通していた. チャイルドは反奴隷制運動にも積極的にコミットしていたように家庭内のみならず社会もまた見据えていたが, 彼女の執筆したコンダクト・ブックには, 同時代に執筆されたこうした類の本とは異なる特徴や目新しさがみられるのではないかと期待できる.

 考察の結果, チャイルドはThe American Frugal Housewifeを通して女性たちに節約の方法や倹しい暮らしと結び付けて道徳を教え説くばかりではなく, 女性にとって家事は自らの身を建てる, 換言すると社会で独立して生きていくためにも必要な術であると教え説くこともまた意図しているのではないかという解釈を導き出せた. チャイルドのこの本では, 家事仕事が女性の自立や幸福とも結び付けられており, 女性たちの幸福にもかかわるものとして家事が捉えられている点もまた着目に値する.

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© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
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