日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
症例
多発性骨髄腫に対し自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法施行後に発症したアシクロビル脳症
三原 正大星野 匠臣内山 由理斉藤 明生三井 健揮小磯 博美横濱 章彦斉藤 貴之内海 英貴半田 寛塚本 憲史村上 博和野島 美久
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2012 年 1 巻 3 号 p. 93-97

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抄録
 50歳女性。多発性骨髄腫(MM:IgM-κ型,尿中Bence Jones蛋白陽性)と診断。ボルテゾミブ+デキサメタゾン療法にて部分寛解となり,メルファラン大量療法を前処置として自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を施行した。移植後,急性腎不全とともに意識障害が出現,単純疱疹予防でアシクロビル(ACV)が投与されていたことから,腎不全を契機としてACV脳症を発症したと考えられた。ACVを中止し,血液透析を施行したところ意識障害,腎障害とも改善した。意識障害時の血清,髄液中のACV濃度が高値で,濃度低下に伴い軽快したことからACV脳症と診断した。造血幹細胞移植ではACVの予防投与が推奨されるが,移植に際しては様々な原因で腎障害を併発する。移植後ACV投与症例において中枢神経症状を来した場合,ACV脳症の可能性に留意すべきであり,特にMMでは容易に腎障害を来すため注意が必要である。
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© 2012 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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