2021 年 10 巻 2 号 p. 94-101
当科で造血細胞移植を施行した41移植(38名)を対象とし,低用量valacyclovir(VCV)投与による移植後帯状疱疹発症予防効果を検討した。2015年7月以降の移植患者17移植(16名)に移植後帯状疱疹発症予防を目的に低用量valacyclovir(VCV)投与を行い,2015年6月以前の帯状疱疹発症予防非実施群24移植(22名)と比較した。用量はVCV約10mg/kg/day 1日1回内服とし,免疫抑制剤終了まで継続した(投与期間:11.4±9.9ヶ月)。VCV非投与群では水痘罹患歴のある児の約半数が帯状疱疹を発症していた。VCV投与群ではVCV投与中には帯状疱疹発症はみられなかった。VCV投与終了後に3例(17.6%)が帯状疱疹を発症しており,予防投与終了時期については検討が必要と考えられた。移植前水痘罹患歴あり,VCV予防投与なしが移植後帯状疱疹発症リスク因子と考えられた。長期間低用量VCV投与は安全かつ帯状疱疹発症予防に有効であり,少なくとも水痘罹患歴がある症例では免疫能がある程度回復するまで予防投与の継続が望ましいと考えられた。