2021 年 10 巻 2 号 p. 87-93
慢性活動性EBウイルス感染症は,EBVがT細胞あるいはNK細胞に潜伏感染し,クローナリティを持って増殖,臓器に浸潤し,多彩な症状を呈する難治性疾患である。予後は,概して不良で,無治療の場合には,臓器合併症・急性転化により死に至ることが多い。筆者らは,慢性活動性EBウイルス感染症患者に対して大規模な網羅的遺伝子解析を行い,1)生殖細胞列の変異はほとんど認められないため原発性免疫不全症が潜んでいる可能性は低いこと,2)EBV感染細胞では,DDX3X,KMT2Dなどのドライバー遺伝子変異が認められ,経時的に観察できた例では,EBV感染細胞のクローン進化が確認されること,3)高率に欠失ウイルスが認められ発症に関与している可能性があること,を明らかにした。本稿では,これら遺伝子解析によって解明されつつある慢性活動性EBウイルス感染症の発症病理と,診断・治療に関わる最新の知見について概説する。