日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
総説
造血幹細胞移植後の止血凝固関連合併症の病態と治療
野村 昌作
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2014 年 3 巻 2 号 p. 32-38

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抄録

同種の造血幹細胞移植(HSCT)後には,サイトカインやケモカイン,そして種々の可溶性分子が著明な変動をきたす。これらのバイオマーカーの評価は,HSCTに関連した凝固異常症(TAC)の診断や予後を理解する上において重要である可能性がある。代表的なTACである肝中心静脈閉塞症(VOD)は,肝腫大・黄疸・腹水・体重増加・汎血球減少をきたす重篤な病態であり,現在のところ,それに対する決定的な治療法はみあたらない。リコンビナントトロンボモジュリン(rTM)は,血管内皮細胞の表面に存在する膜型TMと同様の構造を有している製剤であり,活性化内因性凝固因子であるVaとVIIIaを活性化プロテインC依存性に不活化する新規抗凝固薬である。またrTMは,そのレクチンドメインによって優れた抗炎症効果も所有している。VODを代表とするTACの原因の一つは,HMGB1を含む種々のサイトカインである可能性が高いので,rTMはVODに対する新規治療戦略として有望であると考えられる。

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© 2014 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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