日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
症例報告
発作性夜間血色素尿症から急性骨髄性白血病に移行し,eculizumab先行投与後に非血縁者間同種骨髄移植を行った一例
佐分利 益穂宮崎 泰彦井谷 和人長松 顕太郎大塚 英一緒方 正男佐分利 能生
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2015 年 4 巻 3 号 p. 87-90

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抄録

 症例は40歳男性。発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria, PNH)の診断より6年目に急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)に移行し,骨髄破壊的前処置(cyclophospamide 120mg/kg,全身放射線照射12Gy)により非血縁者間骨髄移植を行った。溶血の鎮静化を目的として移植3ヵ月前からDay-4まで計7回のeculizumab投与を行い,移植前に溶血所見は改善した。移植後一過性に軽度のLDH上昇を認めたが移植後day 19以降正常化し,eculizumab投与中止による急性溶血反応を認めなかった。移植後完全ドナー型となり,AMLは寛解を維持している。PNHに対する同種造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation, HSCT)は造血不全症例や急性白血病に移行した症例に対して完治が得られる唯一の治療である。本例では速やかに生着が得られ,重篤な移植片対宿主病および感染症の合併も認めなかったが,eculizumabがHSCTに与える影響は明らかでなく,症例を蓄積し有用性および安全性を検討する必要がある。

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© 2015 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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