日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
4 巻, 3 号
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総説
  • 野村 昌作
    2015 年4 巻3 号 p. 57-65
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     造血幹細胞移植(HSCT)は,移植片対宿主病(GVHD),肝類洞閉塞症(VOD),血栓性細小血管障害(TMA)などの合併症をきたす。これまで急性GVHDは,臨床症状,検査データ,組織所見を参考にして診断されてきたが,最近は,病態に関わる様々な要因としてのバイオマーカーに関しても模索されつつある。また慢性GVHDは,自己免疫性疾患様の免疫反応をきたすと考えられているため,免疫関連のバイオマーカーが報告されている。VODとTMAは特徴的な臨床症状をきたすが,その本態は凝固異常病態であり,止血・凝固・線溶系のマーカーや,血管内皮細胞の活性化および障害マーカーの測定が重要である。さらに最近では,移植後合併症の診断に特異的な新規バイオマーカーもいくつか報告されている。
  • 山花 令子
    2015 年4 巻3 号 p. 66-73
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     血液腫瘍の治療として,造血細胞移植は日本では年間約5,000人の患者に実施されている。この数は,治療法や支持療法が拡大し,高齢者への移植が可能となったことで増加傾向にあり生存率も高くなっている。このような中で,移植治療の効果を生存や合併症だけでなく生活の質(以下,QOL)でも明らかにしようとする研究が多く取り組まれている。治療後のQOLの回復には数年を要し,身体的,社会的,役割機能,認知機能,疲労,金銭的問題などの問題がみられる。それは,患者QOLは支える人たちにも様々な影響をもたらす。看護支援を行ううえでは,移植患者のパートナーのうつ発生率が健康集団の3.5倍と高いことや,ドナーが幹細胞提供に対して肯定的な感情だけでなく不安や責任感という複雑な感情を持つということも忘れてはならない。このような情報を踏まえて,患者や支える人達の問題を敏感に捉え,ニーズに対応しながら,対処をともに考える支援が,患者や患者を支える人たちが自身での対処を見出すことに繋がると考える。
研究報告
  • Yukinori Nakamura, Yoshinori Tanaka, Mayumi Tanaka, Akiko Sugiyama, Yo ...
    2015 年4 巻3 号 p. 74-81
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     We retrospectively evaluated the effect of blood tacrolimus concentration early after cord blood transplantation (CBT) on acute graft-versus-host disease (GVHD). Twenty-eight patients who underwent CBT and received continuous tacrolimus infusion were included. The mean concentration of tacrolimus during the second week (17.8±3.7ng/mL in 0-Ⅰ versus 12.6±3.7 in Ⅱ-Ⅳ; P<.01) after CBT was significantly associated with gradeⅡ-Ⅳ acute GVHD. On the receiver operator characteristic curves, a cutoff value of 15ng/mL during the second week, provided the best balance between sensitivity and specificity. Multivariate analysis demonstrated that a mean tacrolimus concentration<15ng/mL during the second week was a significant risk factor for gradeⅡ-Ⅳ acute GVHD (hazard ratio, 0.22; 95% confidence interval, 0.07-0.69; P<.01). Early post-CBT tacrolimus concentration has a significant impact on the development of gradeⅡ-Ⅳ acute GVHD.
症例報告
  • 横山 明弘, 工藤 昌尚, 籠尾 壽哉, 大橋 晃太, 細田 亮, 朴 載源, 上野 博則, 矢野 尊啓
    2015 年4 巻3 号 p. 82-86
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は47歳男性。Imatinibのコンプライアンス不良で急性期慢性骨髄性白血病に移行し,dasatinib使用後に中枢神経浸潤を併発した。病勢をコントロールし,同種骨髄移植と全脳照射を施行した。肝臓,消化管を主体とした重複型慢性移植片対宿主病(GVHD)に対し,day 107よりmethylprednisolone 1mg/kg/日の投与を開始した。Day 121にmajor bcr-abl mRNA定量の増加を認め,day 173よりベクロメタゾン(BDP)4mg/日の経口投与に変更した。消化管症状は改善し,BDPは漸減しday 285で終了した。mRNA定量では実測値50copy/μgRNA未満を維持している。チロシンキナーゼ阻害剤の効果が期待できない慢性骨髄性白血病において,BDPで消化管GVHDを抑制し移植片対白血病効果を維持する治療戦略が奏功したと考えられる。
  • 佐分利 益穂, 宮崎 泰彦, 井谷 和人, 長松 顕太郎, 大塚 英一, 緒方 正男, 佐分利 能生
    2015 年4 巻3 号 p. 87-90
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は40歳男性。発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria, PNH)の診断より6年目に急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)に移行し,骨髄破壊的前処置(cyclophospamide 120mg/kg,全身放射線照射12Gy)により非血縁者間骨髄移植を行った。溶血の鎮静化を目的として移植3ヵ月前からDay-4まで計7回のeculizumab投与を行い,移植前に溶血所見は改善した。移植後一過性に軽度のLDH上昇を認めたが移植後day 19以降正常化し,eculizumab投与中止による急性溶血反応を認めなかった。移植後完全ドナー型となり,AMLは寛解を維持している。PNHに対する同種造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation, HSCT)は造血不全症例や急性白血病に移行した症例に対して完治が得られる唯一の治療である。本例では速やかに生着が得られ,重篤な移植片対宿主病および感染症の合併も認めなかったが,eculizumabがHSCTに与える影響は明らかでなく,症例を蓄積し有用性および安全性を検討する必要がある。
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