日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
総説
造血幹細胞移植時の真菌感染管理
森 有紀
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2015 年 4 巻 4 号 p. 91-100

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抄録

 侵襲性真菌症は,CT検査や血清学的検査などの診断技術が向上し,効果が高く毒性が少ない新規抗真菌薬が導入された今日でも,依然として造血幹細胞移植後の重要な合併症の1つである。真菌の疫学の変化や薬剤耐性の獲得など病原側の要因はあるものの,移植治療の著しい進歩に伴い多様化しかつ複雑化した宿主側の要因も極めて大きいと考えられる。従って,移植からの各時期における宿主の免疫状態と患者を取り巻く環境要因とを経時的に把握し,その時々の宿主のリスクを詳細に評価した上で,予防・治療にあたる必要がある。抗真菌薬の選択にあたっては,標的とすべき具体的な真菌種を想起する,或いは各種診断手法を駆使して極力真菌種を同定するなどの努力を行いつつ,各薬剤の特性を十分に理解して,有効性と毒性のバランスをとることが重要である。

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© 2015 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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