日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
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総説
小児造血幹細胞移植後の晩期合併症とQOL
石田 也寸志
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2016 年 5 巻 3 号 p. 51-63

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抄録

 移植成績の改善を背景に,患者QOLや晩期合併症が重要になってきた。移植後晩期合併症は,全身照射と大量化学療法のいわゆる前処置に伴うものと慢性Graft versus Host Disease(GVHD)によるものと大きく二つの機序による。移植群では40%以上にやせがみられ,低身長の頻度は非移植群の2倍となり,晩期合併症は78%(非移植群45%)に観察された。呼吸障害は生命予後にかかわる重要な合併症で,内分泌障害が高率に生じ成長障害・甲状腺機能障害が主なものである。骨髄破壊的移植後の性腺機能障害は高率で不妊率も極めて高い。移植後は二次的免疫不全となるためワクチンの再接種は不可欠である。二次がんとしては,移植後の固形腫瘍累積発症率が高く,発症には慢性GVHDと放射線治療がかかわっている。移植後のQOLを評価した研究も増加しており,移植後小児患者の長期フォローアップとQOLの重要性を示している。

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© 2016 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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