2016 年 5 巻 3 号 p. 74-81
血栓性微小血管症(TMA)は,血小板減少,溶血性貧血,全身もしくは腎臓内の血小板血栓を特徴とする疾患群である。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒症症候群(HUS)が代表的な疾患であるが,造血幹細胞移植後にも移植後TMAが発症する。移植後TMAはTTPと同様の疾患と考えられていたが,血漿交換に対する反応の違いから別疾患と考えられるようになった。TTPではADAMTS13活性が著減するが, 移植後TMAでは著減しない。病因は不明な部分が多いが,移植変対宿主病(GVHD),カルシニューリン阻害薬などによる血管内皮細胞障害が重要である。移植後TMAに対する治療法は確立されていないが,早期に治療を開始することが重要である。現状ではカルシニューリン阻害薬の減量や変更が行われているが,血漿交換の効果が十分でないことから遺伝子組換えトロンボモジュリン,リツキシマブ,エクリズマブなどの新規薬剤の効果が期待されている。