抄録
1995年から2015年の間に当科で血縁ドナーを第一候補として計画された造血幹細胞移植についてHLA検査の実施状況,最終的なドナー選択,第一候補ドナーから移植しなかった症例の経緯,臨床経過を後方視的に検討した。対象59件の内訳は同胞35件,親24件で,54件が最終的にドナーとなった。一方,第一候補ドナー5件(同胞4件,親1件)のうち4件はドナーの健康上の問題,ドナー本人または家族の希望,遺伝性疾患のキャリアからの移植の回避などの理由で代替ドナーに変更となり,1件は患者の希望により移植が中止されたため,最終的に採取が施行されなかった。さらに,2件のドナー候補は健康上の理由で骨髄から末梢血幹細胞採取に変更となった。ドナー候補への不必要な苦痛を避けるため,HLA検索前に年齢に応じた身体的・精神的適格性の判定とドナー候補・家族へのインフォームド・コンセントを十分に行う必要があると考えられた。