抄録
小児の造血幹細胞移植においてダブルルーメンの中心静脈カテーテルからタクロリムス持続静注を行う際,投与を行っていない側のルートからの逆流採血による検体で血中濃度モニタリングを行うのが一般的であるが,偽高値がしばしば問題となる。採血方法の工夫でその誤差を抑えられるか検討するため,標準的な逆流採血法(標準法)と,採血の直前に生理食塩水5mLでルートをフラッシュしてからの逆流採血法(フラッシュ法)とを後方視的に比較した。造血幹細胞移植でタクロリムス持続静注を行っている際,逆流採血で採取された検体の血中濃度と,穿刺採血の検体の血中濃度の比(Rc)を集計したところ,フラッシュ法で有意にRcが低値であった(中央値1.019 vs 1.142,p=1.8×10−10)。フラッシュ法は逆流採血におけるタクロリムス血中濃度偽高値を減少させ,頻回の穿刺採血なしで血中濃度をモニターすることを可能にすると考えられた。