日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
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総説
造血細胞移植後の免疫再構築と予防接種
東 英一
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2016 年 5 巻 4 号 p. 138-147

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抄録

 造血細胞移植後の二次性免疫不全状態においては種々の感染症に罹患する頻度が高く,時にその治療に難渋する場合も多い。とりわけ移植後は移植前に自然感染や予防接種によって得られた免疫能が経年的に低下もしくは消失するために,予防接種によって発症の予防または症状の軽減が期待できる場合はその実施が推奨される。造血細胞移植後のワクチン接種の時期と種類を決定するにあたっては,移植後の免疫学的再構築がどの時期に認められるのかが重要である。また,ワクチン接種前後の効果判定の基準については,ワクチン接種後の感染防御能と相関する免疫学的指標(Correlates of Protection,以下CoP)として抗体価測定が使用されているが,CoPには液性免疫,細胞性免疫,粘膜免疫が含まれており,抗体価のみで判定することの臨床的有用性が限定的であることがある。本稿では造血細胞移植後の免疫回復と予防接種の現況について解説した。

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© 2016 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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