日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
研究報告
55歳以下の若年成人に対する強度減弱前処置を用いた同種造血幹細胞移植の有効性と安全性
堺 寿保澤 ひとみ柿本 宜秀今井 奏衣稲垣 裕一郎加藤 智則澤 正史
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2018 年 7 巻 3 号 p. 82-89

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抄録

 強度減弱前処置(reduced-intensity conditioning,RIC)を用いた同種造血幹細胞移植(allo-SCT)の若年成人に対する有効性は明らかでない。その有効性,安全性を明らかにすることを目的に,AML,MDS,ALLの55歳以下の若年成人に対するRICの成績と骨髄破壊的前処置(myeloablative conditioning,MAC)の成績を後方視的に比較した。MAC群136例,RIC群24例が解析対象となり,単変量解析において,MAC群と比べRIC群では増悪率が高い傾向にあった(3年累積増悪率31.9% vs 42.1%,P=0.09)が,全生存期間は差を認めなかった(3年全生存率46.5% vs 40.6%,P=0.12)。無増悪生存期間,非再発死亡率は両群間で差は認めなかった。多変量解析において,RICは増悪率を増加させ(HR 2.12,P=0.01),全生存期間を短縮させる(HR1.75,P=0.04)因子であると同定された。生着率,aGVHD累積発症率,cGVHD累積発症率に影響は与えなかった。若年成人に対するSCTにおけるRICの使用は全生存期間の短縮と増悪率の増加に有意に関わる因子であるが,合併症など背景が不良でMACによるSCTが困難な患者に対しても治療関連死亡を増やすことなく行える治療であり,治療選択肢の一つとなりうる。

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© 2018 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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