本稿は、ルドルフ・シュタイナーの色彩論について、19世紀末から20世紀にかけて展開された科学的色彩論やクレー、カンディンスキーなどのバウハウスの教師たちの色彩論などの同時代のコンテクストから読み直すことによって、シュタイナーの色彩論の意味内実をより明確に捉えられることを示したものである。シュタイナーは、色彩と身体のつながりを二元論的に捉えようとする科学的色彩論から距離を置き、ゲーテの色彩論における実在論的視点からの影響を受けつつ、進化論的視点という独自の視点に立脚した一元論的な色彩論を提示したのである。シュタイナーは、実在論的視点や進化論的視点に立脚することによって、自然界における色彩現象と人間の身体や感覚とのつがなりを解明し、そこから導き出された色彩が直接身体や感覚に働きかけてくるという観点に基づき、色彩を通じて自然の生成過程を追体験する絵画方法を提示したのである。