抄録
台湾は、日本と同じく環太平洋火山帯に属しているため、温泉が島内に豊富に沸いている。九州とほぼ同じ面積にもかかわらず発見された温泉は、約100箇所にのぼる。泉質は、多種多様である。また冷泉や濁泉、海底温泉など珍しい温泉も存在し、台湾は世界的にみても優れた泉質を持つ地域であることが分かる。しかしながら、台湾温泉の歴史は浅く、主な開発が始まったのは日本統治時代からである。そのため、戦前は日本式の温泉施設が数多く作られたが、戦後、独自の発展を進み、日本と台湾の相互の文化が融合した温泉施設も残っている。近年、台湾は週休二日制の導入により、レジャーへの関心が高まり、新たな温泉施設が多数作られている。しかし、急増した温泉施設により問題点も多くみられるようになった。また、2003年6月に制定された「温泉法」は、これからの台湾の温泉開発に大きな影響を及ぼすと考えられる。そこで本発表では、日本との関係が深い台湾の温泉開発の過程を地理的分布と歴史的観点より報告し、台湾の温泉開発の問題点を探る。