人文地理学会大会 研究発表要旨
2003年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 515
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日米の観光案内書に記載された地点の空間的な分布とその隔たり
*鈴木 晃志郎
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キーワード: 空間描写
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抄録
発表者は,既に日米4都市における案内書の道案内表現の比較研究により,住所表示システムと街路パターンの相違が,道案内文の表現や地図の利用に違いをもたらしていることを明らかにした。しかし,これらの研究では地図と言語を個別に扱っており,両者の関係については詳しい検討を行っていない。また,東京のように,規則性が異なる街路パターンがモザイクのように入り組んでいる都市の場合,とりあげられた地点の分布が表現に影響を及ぼしている可能性もある。本研究は,日米の観光案内書を用い,読み手に空間情報を提供するために,地図と道案内文がどのように関わり合って用いられるのかを,掲載地点の空間的分布によって地理学的に検討することを目的とする。 まず,東京について記述している日米各3種類の観光案内書について,掲載された各地点の紹介文に含まれている道案内に関する文節を抽出し,3種類の参照系と4種類の被参照物にカテゴリー分けする方法で数量化した。さらに,各地点の住所をアドレスマッチングして経緯度に変換し,GISを用いて空間分布パターンを調べた。分析の結果,東京の場合,掲載地点の分布には日米間に大きな差は見られず,むしろ差異は地図と言語情報の使い分け方と,案内書の構成のほうに顕著な影響が認められた。日本の案内書は,個別に道案内文を提示するアメリカのものとは異なり,各地区ごとに一括して,その地区までの道のりを提示し,そこから先は地図による提示を行っていた。即ち,2つの空間スケールで地図と言語の使い分けが行われている。いっぽう,言語情報の依存度が高いアメリカの場合は,やはり参照系の使い方に街路パターンの使い方などの局地的条件が影響を及ぼしていることが明らかになった。
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© 2003 人文地理学会
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