人文地理学会大会 研究発表要旨
2009年 人文地理学会大会
セッションID: 403
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第4会場
住民が抱く犯罪不安の社会地理
*齊藤 知範
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抄録

先行研究の問題点
 先行研究によれば、犯罪不安とは、「犯罪や、犯罪に関連するシンボルに対する情緒的反応」、被害リスク知覚は、「犯罪被害に遭う主観的確率」とそれぞれ定義することができ、別々の構成概念として捉えることが可能である。
 阪口(2008)が用いている、2000年のJGSS(日本版総合社会調査)における分析指標は、「あなたの家から1キロ(徒歩15分程度)以内で、夜の1人歩きが危ない場所はありますか(1 ある、0 ない)」である。アメリカのGSSが”afraid”という言葉を用いて「夜の1人歩きが不安な場所があるか」と尋ねており犯罪不安の指標に近いのに対して、JGSSの指標は「夜の1人歩きが危ない場所はあるか」と尋ねているためリスク知覚に近く、犯罪不安の指標としては不適切であると考えられる。先行研究においても、犯罪不安を測るためには、JGSSの指標を今後「夜の1人歩きが不安な場所があるか」という指標に変更することも検討すべきであるといった重要な問題点が指摘されている(阪口 2008:475)。阪口(2008)などの先行研究においては、犯罪不安を測る上ではワーディングをはじめとする調査設計に大きな問題点があり、データの制約上、犯罪不安の要因構造に関して充分な検討をすることが困難である。さらに、犯罪不安に関する調査設計や分析に際して、地理的な観点は、これまでわが国の諸研究においてはほとんど考慮されてこなかった。

本研究のアプローチ
 これに対して、本研究においては、住民調査を実施し、犯罪不安に関する指標を心理的な側面と行動に関する側面とに切り分けて測定することにより、分析に使用する。行動に関する側面については、具体的にどのエリアに対して犯罪不安に由来する回避行動を取っているかを、白地図を用いて記入してもらう調査を併用している。
 住民調査についての概要を記す。神戸市須磨区のニュータウン地区と既成市街地地区からそれぞれ2小学校区、3小学校区を任意に選定し、これら5校区の20歳から69歳までの成人住民の縮図になるように、住民基本台帳にもとづき、確率比例抽出法によってサンプリングした。1つの調査地点につき50名ずつを抽出し、50の調査地点の合計2500名を対象に、2009年1月から2月にかけて、郵送法により調査を実施した。回収率の向上を目的とする、督促とお礼状を兼ねたリマインダー葉書は、1回送付した。1086票が回収され、回収率は、43.4%であった。回答に不備のあった4票を除外し、1082票を分析対象とした。
 当日は、その分析結果の一部について報告し、社会学的、地理学的視座から、いくつかの考察を加えることとしたい。

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