抄録
分野:経済地理学 一次産業(林業)分野 農山村
概要:森林関連事業に関する制度変更は、林業事業者らの事業展開にさまざまな影響を与えてきている。長野県では、全国に先駆けて、森林関連事業の入札制度が導入されたが、このことは森林関連のさまざまな事業者の組織化、ネットワーク形成の契機となり、新たな事業体を生み出してきたと考えられる。こうした新規事業体を構成しているのは、個人で林業作業を請け負う「一人親方」であるが、彼らには従来の「一人親方」とは異なる属性を有している。林業事業体の組織は、森林組合の組織に端的に表れているように、事務労働と現場労働とが明確に区分されている点に特徴がみられるのに対し、彼らには、こうした分業関係を解消(あるいは克服)しようとする意志が認められるのである。また、彼らには一定の共通の析出基盤が認められる。本報告では、いくつかの具体的事例を紹介しながらこうした動向が生まれてきた要因を組織内部およびこの間の制度的変化との関係から検討し、ネットワーク形成による組織化の過程を明らかにする。