比較文学
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論文
Japan’s Contributions to Gulliver’s Travels
ジョンソン モーリス北垣 宗治ウィリアムズ フィリップ
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1977 年 20 巻 p. 176-156

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抄録

 ジョナサン・スウィフトが『ガリバー旅行記』を書く準備のために、旅行に関する本を調べたこと、そしてそのような本が彼の蔵書の中にあったということはよく知られているが、彼の日本の扱い方については、あまり研究がなされていない。ガリバーの最初の三つの航海のいずれにおいても言及されているが、日本は、第三回目の航海では、異国風の名前をもった想像上の国の中の一つの実在の国として、意味ありげに扱われている。われわれは、リリパット(小人国)、ブロブディングナグ(大人国)、フウィヌム国渡航記も、日本に関する著作からヒントを得ているということを示すつもりだが、この論文においてわれわれの関心の中心となるのは、「ラピュタ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリップおよび日本渡航記」である。

 第一部ではラガード・アカデミーの自動文字盤をエンゲルバート・ケンプファーの『日本誌』に印刷された十七世紀の仮名の表によって解明したい。ガリバーの文字盤には日本の仮名文字が使われていることがわかる。

 第二部では、スウィフトが、実際の日本旅行についての歴史的材料を用いることによって、彼の冒険の中に見られるいくつかのもっとも想像力豊かな要素だけでなく、特にガリバーの性格づけの指針を得ているという証拠を示したい。

 ケンプファーとウイリアム・アダムズという二人の十七世紀の日本旅行者から、一人の人物を引き出してみると、ガリバーに非常に近い人物となる。われわれが合成によってつくり出したガリバーは、英語を話す船乗りで、彼は「オランダ人」となり、海や見知らぬ土地で長い年月痛ましい経験をし、最後に日本へとたどり着く。尋問を受けた後、江戸へ連行され、数々の経験を重ねた後「国王」に西洋の事情を報告するものとなり大砲や船の作り方を教えて重用され、遂には日本の衣服や風習、さらには結婚生活にも慣れ、英国に戻る気持を完全になくしてしまう。

 ケンプファーとパーチャスは、すぐれた「馬」の島と同様に、小人国や「ヤフー」を思わせる人間の島についての報告のよりどころともなっている。彼らの記録には、ガリバーの旅行記と合致する、都市の形態や大きさ、ガラス製品に対する反応、政府の政策といった、数多くの類似点が見られるのである。(佐々木肇・訳)

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© 1977 日本比較文学会
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