2007 年 24 巻 3 号 p. 110-121
フォン・フリッシュがミツバチのダンス言語を発見してはや60年,ハチはダンスを“見る”のではなくダンスのときに生じる翅音を“聞く”ことによって蜜源までの方向と距離を計算していることが明らかになりつつある。この聴覚情報処理にあずかる感覚器官が触角基部にあるジョンストン器官である。われわれはダンス言語情報処理システム解明のための第一歩としてジョンストン器官の一次感覚中枢の同定に成功した。ジョンストン器官の感覚線維の投射パターンは従来考えられていた以上に精緻で,多数の並列情報処理経路を形成していることが示唆される。本総説では比較形態学の観点からジョンストン器官の研究のトレンドを広く紹介したい。