比較生理生化学
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総説
microRNA 生合成変動が引き起こす病態生理現象
戸高 寛樋口 琢磨坂本 修士
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2016 年 33 巻 4 号 p. 183-190

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抄録

microRNA(miRNA)は,標的となるメッセンジャーRNAの翻訳を阻害することで様々な生命現象を制御する。これらのmiRNAの生合成は,多くのRNA結合タンパク質により厳密に制御されている。従ってmiRNA生合成を制御するRNA結合タンパク質の異常な発現変動は生体システムの破綻を引き起こし,疾患発症に影響を及ぼすことが知られている。我々は,これまでに,過剰発現したRNA結合タンパク質Nuclear Factor 90(NF90)-NF45複合体がmiRNA初期転写産物のプロセシングを抑制し,miRNA産生を負に制御することを見出している。本稿では,NF90-NF45過剰発現マウスを用いた表現型解析および機能解析より見出された「過剰発現したNF90-NF45はmiR-133生合成を抑制し,骨格筋の中心核化および筋委縮を誘導する」ことを主として紹介する。加えて,近年発表した「肝細胞癌において発現増加するNF90-NF45がmiR-7生合成機構を抑制して細胞増殖を促進する」ことついても紹介する。これらの知見を通じてNF90-NF45の過剰発現および発現増加が及ぼすmiRNA生合成機構の制御とその機構を介した疾患発症について述べる。

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© 2016 日本比較生理生化学会
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