比較生理生化学
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総説
採餌行動の神経基盤:動物はどうやって「良いもの」を見つけるのか
網田 英敏彦坂 興秀
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2018 年 35 巻 3 号 p. 158-167

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抄録

たくさんのものの中から自分の欲しい餌をすばやく見つけることは動物にとって重要なスキルである。餌の探索に時間をかけると,他個体に奪われたり,自分が捕食されるリスクが高まるからである。そのため,動物は採餌経験をもとに好ましい餌をすばやく見つける能力を備えている。アカゲザルはヒトと同様に視覚を用いて採餌をしているため,視覚手がかり刺激と報酬との関係性(連合)をすみやかに学習することができる。連合学習を繰り返し経験させると,サルは報酬と結びついた刺激に対してすばやく眼球運動(サッケード)を行い,複数の刺激のなかから報酬と結びついた刺激を見つけ出せるようになる。私たちの研究グループは,大脳基底核回路がこの探索スキルに重要であることを見つけた。大脳基底核にあるニューロン群は,報酬と連合した刺激をそうでない刺激と区別して表現していた。さらに,大脳基底核にある直接路と間接路を光遺伝学や薬理学的手法で操作することによって,サルの眼球運動を変えることができた。一連の研究から,直接路は「良いもの」に目を向けるために,間接路は「悪いもの」を見ないようにするためにそれぞれ協調して働いていることがわかった。

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© 2018 日本比較生理生化学会
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