2007 年 59 巻 1 号 p. 41-48
表在性膀胱癌に対する Bacillus Calmette-Guérin (BCG) 膀胱注入療法の有効性は広く認められているが,生菌であるため副作用の頻度が高く,しばしば重篤な有害事象も認められる.本研究では BCG に含まれる効果的な成分を見いだすことを目的に BCG の菌体を分画し,その抗腫瘍効果を検討した.BCG (Tokyo 172 株) を超音波処理またはオートクレーブ処理後,遠心分離して上清と沈渣に分画し,ヒト膀胱癌細胞株 5637 と混合培養した.BCG生菌と超音波処理またはオートクレーブ処理上清画分は 5637細胞の増殖を抑制し,ギムザ染色及びフローサイトメトリー解析によりアポトーシスが検出された.これらの結果は,上清中の成分がアポトーシスを介して 5637細胞に細胞増殖抑制効果をもたらすことを示唆し,これらの画分を精製することにより,より効果的で副作用の少ない新しい抗腫瘍薬の創薬が期待される.