近年,必須微量元素の欠乏が酸化ストレスを介して生活習慣病や老化に影響を与えている可能性が指摘されている.そこで,本研究では,地域一般住民 606名 (男性225名,女性381名) を対象として,生理的な濃度における生体内必須微量元素と好中球の平常時活性酸素種産生量 (Basal ROS産生量) の関係について疫学的に調査・検討した.その結果,男女共に,Se の血中濃度が高い人ほど好中球の Basal ROS産生量が少ない傾向がみられた.一方,Cu,Zn,Fe については好中球 Basal ROS産生量と関連はみられなかった.したがって,生理的な濃度範囲内であっても Se は好中球の ROS産生に対して抑制効果を示し,好中球による酸化ストレスを抑えている可能性が示唆された.一方,Cu,Zn,Fe については,生理的な濃度範囲内であれば好中球の ROS産生量に影響を与えない可能性が示唆された.