弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
原著
中枢移行性アンジオテンシン変換酵素阻害剤投与によるラット脳内ペプチド性物質のプロファイリング
金澤 佐知子細井 一広照井 一史下山 律子中川 潤一板垣 史郎早狩 誠
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2014 年 65 巻 1 号 p. 95-103

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抄録

 本研究は,中枢移行性ACE 阻害剤 (ACEI) による記憶保持亢進の機序を解明することである.中枢移行性 ACEI (captopril),非中枢移行性ACEI (imidapril) および ARB(losartan)投与ラットでの脳内ペプチドの発現変化を HPLC法および TOF-MS法を用いて検索した.その結果,TOF-MS法では,captopril投与群で特異的に発現が亢進するペプチドを多数検出できたが, その多くは質量数3,000以下であった.なお,これらの質量数はすべて一価イオンとして検出されたことから,すべて物質固有の質量数を反映していた.検出した質量数は,ACE が分解する脳内ペプチド (LH-RH, substance P, β-neoendorphin, neuromedin B, LVV-hemorphin-7, amyloid β-protein)や insulin-regulated aminopeptidase (IRAP) の基質と考えられている vasopressin とは異なる値を示した.脳内には ACE や IRAP 以外にも活性中心にZn²⁺ を有するメタロプロテアーゼが存在することから,今回得られた多くの質量数は,キレート形成能を有する captopril により阻害されたメタロプロテアーゼの内在性基質の可能性がある.

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© 2014 弘前医学編集委員会
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