弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉Myelin-associated oligodendrocytic basic protein(MOBP)はレビー小体に局在する
今 智矢丹治 邦和森 文秋若林 孝一
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2020 年 70 巻 2-4 号 p. 179

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抄録
 Myelin-associated oligodendrocytic basic protein(MOBP)はミエリン構成蛋白の中では 3 番目に多く、中枢神経系ミエリンの構造維持を担っている。近年、遺伝子解析により MOBP 遺伝子変異がアルツハイマー病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症など種々の神経変 性疾患の危険因子であることが明らかにされた。さらにレビー小体型認知症の 皮質型レビー小体におけるプロテオミクス解析によりMOBP がレビー小体に含まれることが示された。そこで種々の神経変性疾患 60 剖検例の脳・脊髄・末梢神経を用いて MOBP の局在を免疫組織化学的に検討した。対象はアルツハイマー病 5 例、ピック病 3 例、進行性核上性麻痺 5 例、皮質基底核変性症 3 例、嗜銀顆粒病 5 例、筋萎縮性側索硬化症 5 例、前頭側頭型認知症 5 例、パーキンソ ン病 8 例、レビー小体型認知症 8 例、多系統萎縮症 5 例、正常対照 8 例である。一次抗体として二種のポリクローナル MOBP 抗体を用いた。一次抗体の特異性につき、正常ヒト、マウス、ラット凍結脳を用いたウエスタンブロット解析を 行い、28kDa のアイソフォームを認識することを確認した。免疫組織化学では、正常対照において、MOBP は中枢神経系のミエリンと中枢および末梢神経系神経細胞の細胞質に局在した。さらに、MOBP はパーキンソン病およびレビー小体型認知症の中枢および末梢神経系レビー小体のコアに局在した。二重蛍光免 疫染色では MOBP はレビー小体の主要構成成分であるαシヌクレインと共局在していた。他の神経変性疾患の封入体は MOBP 陰性であった。MOBP 遺伝子変異がリスクと報告されている疾患の封入体では MOBP 陰性であることから、 MOBP 遺伝子変異は MOBP の異常蓄積を引き起こさない可能性が考えられた。また、MOBP は細胞障害時に細胞保護のために発現が亢進することが報告されている。今回の結果から MOBP はパーキンソン病およびレビー小体型認知症のレビー小体含有細胞において細胞保護的に作用している可能性が考えられた。
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