抄録
日本の間氷期の地層から産出するサルスベリ属花粉化石の種を同定するために,サルスベリとシマサルスベリ,ヤクシマサルスベリの短雄蕊と長雄蕊の現生花粉を光学顕微鏡と走査電子顕微鏡で観察し記載した。その結果,2種1亜種間の形態の差は長雄蕊花粉ではみられなかったが,短雄蕊花粉ではシマサルスベリとヤクシマサルスベリがサルスベリよりも小型で,両極の外壁が厚かった。本州の4地点の最終間氷期を含む間氷期の堆積物から抽出したサルスベリ属花粉化石は,ほとんどが短雄蕊花粉で,長雄蕊花粉もわずかに含まれていた。短雄蕊花粉化石の形態を現生花粉の形態と比較した結果,シマサルスベリ・ヤクシマサルスベリと類似していた。日本の大型植物化石記録や中国の現生花粉形態記載と比較しても,更新世の間氷期に本州中部に広く分布していたサルスベリ属はシマサルスベリやヤクシマサルスベリであった可能性が高い。