植生史研究
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北海道北部,豊富に分布する泥炭層の 花粉分析による後期更新世テフラ,利尻アチャル(Rs-Ac)の 降下時期推定と古環境復原
大井 信夫三浦 英樹
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2004 年 13 巻 1 号 p. 25-30

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抄録

北海道北部の最終氷期前半の泥炭質堆積物には利尻火山起源のテフラが数多くみられ,地層の対比や環境変遷を議論する上で重要な鍵層となる。豊富には後期更新世のテフラ,利尻アチャル(Rs-Ac)を挟む泥炭層がある。その花粉分析結果を周辺地域の分析結果と比較することで,火山灰層序から洞爺(Toya)の上位,阿蘇4(Aso-4)の下位に位置することが知られている利尻アチャルの降下時期を詳細に検討するとともに,北海道北部の最終氷期前半の環境変遷を明らかにした。Rs-Ac1降下を境に,この泥炭層の花粉群は落葉広葉樹の優占からトウヒ属の優占へ大きく組成を変え,明らかな気候の寒冷乾燥化を示す。Rs-Ac2降下後,カラマツ属が増加しさらに寒冷乾燥化が進む。この結果を近隣の羽幌・苫前におけるAso-4,Toya,クッチャロ羽幌(Kc-Hb)を挟む泥炭層の花粉分析結果と火山灰層序を基に対比すれば,Rs-Ac1は酸素同位体ステージ5bの寒冷期のはじめごろ,Rs-Ac2は最も寒冷な時期の直前に降灰したと結論される。

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© 2004 日本植生史学会
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