植生史研究
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古琵琶湖層群畑層から産出した前期更新世末の大型植物化石
南澤 修松本 みどり百原 新山川 千代美
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2008 年 16 巻 2 号 p. 49-55

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抄録
滋賀県高島市畑に分布し,前期更新世末頃に堆積したと考えられている古琵琶湖層群畑層(約74 万年前)から大型植物化石を採取し,古植生ならびに古環境を考察した。落葉広葉樹17 科20 属23 分類群,草本16 科18属27 分類群の主に種実類からなる大型植物化石群集を得た。針葉樹や常緑広葉樹は見られず,ハンノキの産出個数が全個数の36.7%と最も多かった。アゼスゲ節とシバスゲ節を含むスゲ属,ヒメジソ,エゴノキ属,キイチゴ属が比較的多かった。産出した分類群は1 分類群を除いて現生種である。日本からの絶滅種として,サイクロカリア属の化石が見つかり,古琵琶湖層群での最も新しい層準からの産出になった。植物化石群包含層の岩相が塊状無葉理の有機質粘土層であることから,この植物化石群は河川の後背湿地で堆積し,比較的原地性が高く,堆積の場にはヒシ属などの水生植物とハンノキの湿地林が分布し,その周囲には落葉広葉樹が分布していたと考えられる。
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© 2008 日本植生史学会

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