植生史研究
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時代の終焉
21 世紀におけるスギ科樹木の保全状態
Philip ThomasBen LePage
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2011 年 19 巻 1-2 号 p. 89-100

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抄録
かつてスギ科に含められていた9 属13 種の樹木は独特で魅力的な針葉樹である。白亜紀から第三紀を通じてこれらの樹木は北半球の中緯度から髙緯度域の森林の主要な構成要素であり,様々な生態や立地,気候条件のもとで生育していた。始新世から漸新世にかけて生じた寒冷化と乾燥化にともなって,北半球全域でこれらの樹木の生育域は縮小した。鮮新世から更新世にかけて気候が一層不安定となると,生育域はさらに縮小し,完新世が始まる頃には,ほとんどの種は東アジアや北米の南部と西部の限られた地域に生育するだけとなった。完新世には人類の文明が発展し拡大したことによって様々な変化がもたらされ,それはこの2 世紀の間にとくに顕著となった。農業や工業,および都市が急速に拡大したことによって,ほとんどの生物が多大な影響を受けた。先の13 種のうちの9 種は国際自然保護連合(IUCN)のレッドデータブックにおいて絶滅危惧種とされている。ここでは13 種の現在の保全状況を概観し,とくにGlyptostrobus pensilis に注目して,これらの種の近未来における保全の見通しについて検討する。
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© 2011 日本植生史学会

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