植生史研究
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米国に植栽されているメタセコイア樹木にみる安定同位体比の変異
気候変化のシグナルとしての同位体比変異の統計的評価
杨 洪Brian Blais冷 琴
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2011 年 19 巻 1-2 号 p. 75-88

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抄録
様々な気候環境の米国内39 ヵ所に植栽されたメタセコイア樹木の葉を用いて,炭素と窒素の安定同位体比と元素濃度を計測した。27 本の樹木については,南向きの葉のn- アルカンの水素同位体比も計測した。1950 年から2009 年の50 年間の気象データは,植栽地の近くの観測所の測定値からまとめた。同位体比のデータは,緯度と,年平均気温(AMT),春季(2 月~ 5 月)平均気温(SMT),年平均降水量(AMP),春季平均降水量(SMP)をはじめとする地理・気象変数と対比した。統計処理によって以下のことが明らかとなった:1)n- アルカンの水素同位体比と緯度とは高い負の相関をもつ;2)水素同位体比は年平均気温と春季平均気温と有意な相関をもつ;3)水素同位体比は春季平均降水量と低いが有意な相関をもつ;4)炭素濃度は気温と降水量,とくに年平均降水量,と有意な相関をもつ;5)窒素濃度と春季平均降水量は予期に反して相関を持っていた。この結果,メタセコイアの化石から得られる炭素と水素の同位体比は古気候や古環境のプロキシーとして有用であることが示された。
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© 2011 日本植生史学会

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