植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
Print ISSN : 0915-003X
福井県鳥浜貝塚から出土した大型植物遺体の14C 年代測定
縄文時代草創期から前期の堆積物層序と土器型式の年代の再検討
工藤 雄一郎網谷 克彦吉川 純子佐々木 由香鯵本 眞友美能城 修一
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2016 年 24 巻 2 号 p. 43-57

詳細
抄録

本研究では1981 ~ 1983 年に採取された鳥浜貝塚の堆積物試料から抽出した大型植物遺体を用いて体系的な14C 年代測定を行った。その結果,縄文時代前期の北白川下層II 式を含む層準(83T,6 ~ 31 層)は約5990 ~5655 cal BP,北白川下層Ib 式および羽島下層II 式を含む層準(83T,34 ~ 77 層)は約6500 ~ 6190 cal BP であった。縄文時代早期の押型文土器は三方火山灰層(鬱稜-隠岐火山灰層)の上下の遺物包含層でそれぞれ年代が得られ,上位(81L,38 ~ 41 層)で約9675 ~ 9535 cal BP,下位(81L,43 ~ 44 層)で約10,495 ~ 10,250 cal BP であった。縄文時代草創期に相当する堆積物では,多縄文土器包含層(81L,49 層)で約11,615 ~ 11,280 cal BP の年代が得られ,その下位の無遺物層(82T,38 ~ 41 層)で約14,200 ~ 13,150 cal BP の年代が得られた。縄文時代草創期から前期を通じて各層序の厳密な数値年代が得られ,また鳥浜貝塚出土の各土器型式との対応関係を提示できた点は,今後,花粉や種実遺体,木材遺体による研究から得られる古環境の変遷に関する情報と,鳥浜貝塚で行われた人類活動の具体的な内容とを対比していく上で極めて重要な成果である。

著者関連情報
© 2016 日本植生史学会
次の記事
feedback
Top