植生史研究
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東京都下野谷遺跡における縄文時代中期の植物資源利用
山本 華佐々木 由香大網 信良亀田 直美黒沼 保子
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2017 年 26 巻 2 号 p. 63-74

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抄録
東京都下野谷遺跡では,これまで炭化種実遺体と炭化木材遺体の分析から主として堅果類が検出されていた。今回,レプリカ法を用いて土器の種実圧痕を調査した結果,炭化植物遺体では検出されていなかったダイズ属やアズキ亜属,シソ属(エゴマ)の存在が認められた。このように土器の種実圧痕と炭化種実遺体,炭化木材遺体はそれぞれ残りやすい分類群が異なるため,3 種類の分析法を組み合わせることによって包括的に植物資源利用を明らかにできる。また,本遺跡の集落は縄文時代中期中葉を主体として約1000 年間継続したが,中期後葉の加曽利E1 式期になって大型のダイズ属種子が突如出現する一方,その前後で小型のダイズ属種子も確認された。住居跡数の増減と大型のダイズ属種子の出現時期とを対比し,集落規模の拡大と連動して,小型の種子に加えて大型の種子の利用も開始された可能性を指摘した。従来の研究では時期や地域という大きな区分で複数の遺跡を総合し,縄文時代中期の人口増加とダイズ属の大型化や,それ以前のダイズ属の栽培開始が指摘されていたが,下野谷遺跡では一集落での通時的な変化と大型ダイズ属の出現時期を確認することができた。特に植物遺体に乏しい台地上の遺跡では炭化植物遺体と土器の種実圧痕の両方を検討することが有効であり,また継続期間の長い遺跡では一遺跡内での植物利用の変遷と種子の大きさの変化を確認できることを示した。
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© 2017 日本植生史学会

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