2021 年 77 巻 2 号 p. I_43-I_48
本研究の目的は,気候変動に伴う洪水リスクの増大を念頭に,積雪地域の多目的ダムの洪水調節機能を評価するものである.北海道のような積雪地域では,融雪期に大雨が降ると,利水のために満水に近い状態となっている多目的ダムでは異常洪水時防災操作を余儀なくされる.そこで,夏期の大雨だけでなく,融雪に大雨が相まった洪水を気候変動アンサンブルデータから通年で推定し,異常洪水時防災操作の生起頻度を推定する.結果として,将来は異常洪水時防災操作の生起頻度が増え,特に冬期や融雪期の増加傾向が顕著となることが示された.得られた結果は,気候変動に適応できる治水計画を立案するうえで,事前放流,ダムの再生や新設といった具体的方策に生かされるものと考える.