植生史研究
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佐賀県吉野ケ里遺跡から出土した木製品の樹種
能城 修一鈴木 三男辻 誠一郎
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1999 年 6 巻 2 号 p. 63-78

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抄録
佐賀県吉野ヶ里遺跡から出土した木製品660点の樹種を報告する。時代ごとの内訳は弥生時代中期が193点,中期~後期が99点,奈良時代が317点であった。この中から認識された分類群は約50である。製品群ごとの内訳では,農工具やその柄,容器などは少なく,建築材,およびその他木製品が多く,丸木・自然木もある程度含まれていた。弥生時代中・後期と奈良時代の使用樹種を比較すると,弥生時代中・後期では44樹種と様々な樹種をあまり選択することなく使用しているのに対し,奈良時代では28樹種のうちモミ属が半数ほどのものに使われており樹種選択が絞られている。建築材で見ると,弥生時代は中期,中・後期ともクリがやや多いものの,それ以外の樹種も使っているのに対し,奈良時代になるとモミ属が井戸材および板目板として多用され,井戸枠にはその他スギ,クリ,ツブラジイ,柱としてはクリ,スダジイ,板目および柾目板にはツブラジイが多用され,樹種が限定されてくる。建築材以外では,弥生時代の農工具にコナラ属アカガシ亜属,奈良時代の曲物にモミ属といったところが顕著な樹種選択を示している。弥生時代中期にはムクノキ,エノキ属,クワ属といった二次林‘性の落葉広葉樹が少量ではあっても照葉樹林の要素とともに使われているのに対し,奈良時代になるとほとんど無くなることは,当遺跡での花粉化石群・大型植物化石群の研究結果と整合するものである。
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© 1999 日本植生史学会

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