植生史研究
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この120 年間の記載解剖学の変遷からみる 日本における木材解剖学
須藤 彰司
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2000 年 8 巻 2 号 p. 53-65

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抄録
日本の木材解剖学は,1882年,中村弥六の研究発表によって始まった。その後すでに100年以上が経過している。近年,電子顕微鏡をはじめとした機器の発達により,木材解剖学は,記載解剖学のみではなく,細胞壁の構造や木材形成などの幅広い分野を含むようになり,研究者の数は増加してきている。木材解剖学の歴史の中で,記載解剖学は,比較的少数の研究者の継続的な成果の積みかさねで成り立ってきた。この分野は,当初はドイツ林学の影響を受けたが,海外との交流は多角化するようになり,さらに現在では独自の流れを形成している。木材識別の方法は,二叉式,多孔式,さらにコンピューターの利用などの選択が可能になり,技術としての利用範囲が広がってきた。近年,多種大量の木材が輸入されるようになり,木材識別の重要性が一般に認識されるようになった。研究分野の成熟を反映して,教科書,啓蒙書,図鑑などが出版されるようになった。かつては研究の性格上,国内での研究活動に限られがちであったが,最近では海外での研究活動や国際木材解剖学会(IAWA)を通じた国際的な研究交流がさかんになっている。
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© 2000 日本植生史学会

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