人と自然
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太陽光発電と小型揚水ポンプを用いた簡易魚道内の水位維持の試み ― 設置方法と効果の紹介 ―
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2008 年 19 巻 p. 95-100

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抄録

水田生態系は,魚類や水生昆虫をはじめ,高い生物多様性を有するが,近年では圃場整備などによる乾田 化や水域ネットワークの分断化によって,季節的に水田を利用する生物の移動や生息が困難になりつつある. この課題を解決するために,簡易魚道による水域ネットワークの再生が各地で試みられているが,整備され た水田,簡易魚道では渇水になりやすく,水位の維持が重要な課題となっている.これらを解決するため に,ソーラーパネルによる太陽光発電で小型揚水ポンプを稼動させ,晴れた日のみ簡易魚道および水田など 一時的水域に水を供給する方法を検討した.市民団体など小規模な事業主体による実施を想定し,比較的安 価で入手できること,設置が簡便であること,十分な水位が確保できることの3 点を満たすことを必須条 件とした.その結果,太陽光発電を利用した小型揚水ポンプの設置は十分に条件を満たすものであった.材 料費は約8 万円で,作業は大人5 人で約3 時間であった.確保できた水量は晴天時に4.5L/min.(1 日で 2.7m3)で,簡易魚道および小規模な水田であれば,完全な干出を防ぐのに十分な量であった.今回検討し た方法は,市民団体でも行える程度に安価で簡便であり,かつ高い成果を得られるものであることから,分 断化された水域ネットワークの再生に広く活用可能だと考えられる.

© 2008 兵庫県立人と自然の博物館
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