抄録
兵庫県三田市域に自生する維管束植物の種を証拠標本により示した.合計149 科1130 種が記録された.市内を北部山間地域,中西部丘陵地,武庫川・羽束川沿いの田園地帯,ニュータウン地域に分けたとき,北部山間地には冷温帯でみられる植物が比較的多く生育しており,貴重種も多い.中西部丘陵地には多数の溜め池があり,水生・湿生植物がよく残されている.武庫川・羽束川沿い田園地域には畔や路傍に生える一般的な草花が多いが,山裾などに人里の植物がまだよく残されている.しかし最近,工事や開発などによる土地の改変が激しく,また帰化植物が急速に侵入しており,この地域の植物相は年々変わりつつある.ニュータウン域内にはかなり広範な雑木林が残存しており周辺の丘陵地と同様の植物が比較的多く生育しているが,溜め池周りには植物が少ないことがわかった.