保健師教育
Online ISSN : 2433-6890
ブロック活動報告
九州ブロック活動報告
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2020 年 4 巻 1 号 p. 63-64

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I. はじめに

現在,九州ブロック全国保健師教育機関協議会の加盟校は,25校(養成校1校,大学24校)である.2019年度は九州地域から海を渡り,文化・習慣に特徴のある沖縄県北部での開催であった.

九州ブロックの活動の中心は,年に2回(夏季・秋季または冬季)の定例会および研修会であり,各加盟校から出された教育課題の検討や情報交換を行い,保健師教育の向上および発展につながる研修会や協議を行っている.2019 年度の定例会では,保健師の基礎教育および現任教育の方法等について各大学の実態をふまえて協議するとともに,昨年から引き続き地域診断分野と新カリキュラムの方向性を鑑みた研修会を企画した.参加教員の熱心で前向きな発言と笑顔あふれる親睦の機会は多忙な日々の癒しと保健師教育のネットワーク形成となりつつある.本年度の活動概要を報告する.

II. 活動内容

1. 2019年度(令和元年)活動概要

1) 幹事校会議

会場:名桜大学本部棟会議室

日時:令和元年8月22日(木)19:00–20:30

参加者:4校13名

議題:①九州ブロック予算および活動計画について ②第1回定例会の進行について ③全国ブロック理事会会議の報告内容 ④協議事項・照会事項について ⑤秋季(冬季)研修会について

2) 第1回定例会および研修会

会場:名桜大学 学生会館SAKURAUM

日時:1日目 令和元年8月23日(金)13:00–18:00(①~⑦)

2日目 令和元年8月24日(土)9:00–11:00(⑧)

参加者:14校32名

内容:①社員総会および理事会報告

②九州ブロックの活動

③照会事項

④協議事項

⑤特別講演I「やんばるにおける産学官連携を活用した地域医療・保健活動~健康長寿おきなわ復活を目指して~」

講師:今帰仁診療所長 医師 石川 清和

⑥特別講演II「産業保健と地域保健の連携」

講師:沖縄電力総務部保健師 與那嶺勝枝

⑦懇談会

⑧特別講演III「地域包括ケアの推進とデータ活用,保健師への期待―2025年をめざして―」

講師:沖縄県立中部病院 地域連携課長感染症内科医長・地域ケア科 高山義浩

3) 第2回定例会および研修会

会場:沖縄県産業支援センター

日時:令和元年12月21日(土)13:30–16:25

参加者:11校16名

内容:①理事会報告

②講演:「保健師基礎教育のあり方」

講師:北海道大学名誉教授 富山県立大学客員教授 佐伯和子

③保健師のカリキュラムに関するグループディスカッション

2. 活動結果概要

1) 幹事校会議

本年度の活動や予算,定例会の進行の確認後,ブロック理事からの報告を受け,保健師教育の質保証について,「保健師教育課程の質を保証する評価基準に関する会員校調査報告」を基に,保健師教育を担う教員に質や実習方法について教育格差が生じている現状が明らかになり,会員校によるディスカッションの重要性が話題に上がった.また,厚生労働省から保健師教育のカリキュラムの検討結果が公表される予定であったために,地区診断やカリキュラムの検討に関する研修会が必要であることが認識された.

2) 第1回定例会および研修会

定例会は,幹事校の学長による歓迎の挨拶から始まり,全国定期社員総会と理事会の報告の後,保健師教育に質の保証や教員の配置数,実習の展開等に学校間の格差が顕著であることについて意見交換がなされた.2019年度より西九州大学看護学部が新しく加盟し,25校となった.そのために,九州ブロック運営マニュアルの輪番制の確認をした.さらに,カリキュラム改正に活かせる研修会を第2回に企画することになった.

照会事項は「編入学制度」と「保健師現任教育への参画状況について」の現状の確認と意見交換を行った.協議事項は,「公衆衛生看護学実習施設の指導者に対し,現場の質を上げるための工夫について」は照会事項と重なる点があることから,並行して協議した.会員校や県,市町村によっては予算化して委託,または講師として参画していること,市町村保健師の研修参加率が低い現状を共有できた.

3つの研修会については,特別講演Iでは,大学外の立場から産学官連携を活用した今帰仁村や北部地域と名桜大学の地域医療・保健活動について学習を深めた.次に,特別講演IIでは,沖縄電力における産業保健師の健康経営の取り組みについて評価制度や健康の現状分析,メンタルヘルスの対策の現状,さらに地域と職域連携の強化について話題提供をしたことで,教育機関,研究機関の役割や産業保健実習等に関する質疑が多くみられた.3つ目の特別講演IIIは,地域包括ケアの推進に役立つデータとして国勢調査やNDBオープンデータの活用により,地域診断に活かせることを学習した.また,2025年度以降に向けた今後の課題とその対策として増大する外国人労働者に向けた看護職の教育が急務であることを学習した.

第一日目のプログラム終了後の懇談会では,幹事校の副学長をはじめ教職の参加のもと,名桜大学看護学科の学生ボランティアによる琉球古典音楽,民謡,八重山芸能を堪能しながら,穏やかな雰囲気で親睦を深めた.

3) 第2回定例会および研修会

第2回の定例会および研修会は,ブロック理事からの理事会報告の後の講演では,人生100年時代に対応する大学教育の質的転換と高度専門職人養成,公衆衛生看護学の教育課程と内容において,保健師の活動の拡大と多面性の重要性,看護師課程における地域・在宅看護論と実習の展開のあり方・考え方について学習した.その後に,参加校がシラバスを持ち寄り,3つのグループに分かれ,講義,実習,演習について持ち寄った材で熱くカリキュラム,保健師教育についてディスカッションを行った.

III. 終わりに

九州ブロック活動では,リーダー的教員の導きと会員校の積極的参加により教員間の情報交換を活発に行い,保健師教育の質の向上を目指し続けている.夏季研修会では,海を渡り参加する会員の要望と前年度から引き続いてきた地域診断を意識した企画を行った.その要望は沖縄の文化・習慣を体験できる企画であった.その期待に応えようと,地域の繋がりがある産学官連携を話題とした講演や懇談会では普段からボランティアを行っている看護学生の余興を企画した.これは,我が国が力を注いでいる「地域共生社会」1)を意識し,ソーシャル・キャピタルや沖縄県の文化の1つである「ゆいまーる(相互扶助,助け合い)」を少しでも体験できるようにと工夫した.今回の役割では,幹事校にとっては学内外のネットワークと保健師教育への理解を拡散する機会になり,かなり行動力が付いた.また,ブロック活動を通し知り合った顔の見える関係となったことで沖縄在住の教員が那覇空港まで送迎し,道中,沖縄の墓の話題で充実したことを聞いた.このようなブロック活動内外の繋がりができたことは,教育機関内では数少ない保健師教育担当教員にとって,お互いのネットワーク形成とエンパワメントできる貴重な活動であると考える.

文献
Biographies

担当:田場真由美(名桜大学)

新田章子(活水女子大学)

松尾和枝(福岡女学院看護大学)

 
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